<南風>親かばう子どもたち


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 「今日もきたよー」。ももやま子ども食堂に子どもたちの声が響く。地域の小学生8人。毎週常連のKくんきょうだいもいる。

 昨年5月の開所当初、Kくんはおとなしく、声をかけても返事はなし。もくもくとご飯を食べ、さっさと帰っていた。最近は近所の友達を誘って来てくれる。「次も一緒に来るか」などと話す声が聞こえてくる。来る回数が増え、徐々に心を開くようになったKくん。母親も最近はエプロンを持参してお手伝いに来てくれるように。その日も玄米のおにぎりを子どもたちと一緒に作ってくれた。
 その日のメニューはスパゲティに、地域の方から頂いたトウガンとチキンのみそ汁、サラダ、玄米おにぎり。「うまそう、早く食べたいな」。そう言って子どもたちは元気に「いただきまーす」。奪い合うように平らげた。「おかわりもあるの」と聞いてきたので「大盛りにしようね」と返すと笑顔になる。「あしたの分まで食べていくねー」と冗談を言うと、「うん、食べていく」と大笑いだ。子どもたちや地域のボランティアも徐々に増え、多い時は20人以上の時もよくある。
 子どもたちに何気なく聞くことがある。「今日のお昼ご飯は何だったの」。ほとんどの子どもは、「食べてない」。親をかばうように「食べるの忘れた」という子もいる。朝から何も口にしない子どもも多い。そんな子どもたちが安心して過ごせる場所ができてよかったと、つくづく思う。
 私がいつも願っていること。それは物でもお金でもなく、今それを必要とする子どもたちのために、心を込めて料理を作り、一緒に食べること。しかし、どんなに願っても、まだ届いていない子どもたちがいる。どこかに独りぼっちでいる。早く大人に気付いてほしいと「SOS」を出しているのだと思うと、落ち着かない。
(比嘉道子、NPO法人ももやま子ども食堂理事長)