<南風>星がつなぐ人の輪


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 いよいよハワイ州最大の天文教育プログラム、「ジャーニー・スルー・ザ・ユニバース(宇宙の旅)」が始まります。マウナケア観測所群の天文学者や技術者が地元の学校を訪れ、約1週間、天文学の出前授業をします。すばる望遠鏡のスタッフが「ジャーニー」を通じて過去5年間に行った出前授業は約250。生徒の数は延べ4500人に上ります。

 米航空宇宙局NASAや米国本土の研究員も参加するこの一大イベント、今年は過去最多の総勢85人がハワイの学校を訪れます。私の前の職場、シカゴ大学の同僚も遥々(はるばる)シカゴから参加しています。
 天文学をやっていて常に実感するのが「世界は小さい」ということ。ハワイ、カリフォルニア、シカゴ、パリ。さまざまな場所に住んできましたが、天文学を通じていろいろな人に出会い、研究や教育活動で交流を続けています。まさしく星がつなぐ人の輪です。
 昨日はシカゴのアドラープラネタリウムで働く天文学者と、キラウエア火山へ行きました。道中の話はやはり星々のこと。シカゴにいた時は彼らとハワイで火山を見、共同プロジェクトを開始するとは想像だにしませんでした。
 さて、分光フィルム(回折格子)を常に携帯している私は、火山の分光データを携帯電話のカメラで撮影しました。火山の光が波長別に分かれ、虹のように見えるのです。単に綺麗(きれい)なだけでなく、写真から火山ガスの温度も測定できます。天文学でも同様の方法で、星や銀河までの距離や温度、組成を調べます。早速、明日からの授業で使う予定です。
 私の車には今、太陽系のボールや紫外線で色が変化するビーズ、銀河カードなどさまざまなグッズを乗せていて、さながら「移動ミニ宇宙館」です。今週はめいっぱい宇宙授業を楽しみたいと思います。
(嘉数悠子、国立天文台ハワイ観測所アウトリーチ・スペシャリスト)