<南風>新著が生まれる


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 私が編者を務め、10人の執筆者と4人の翻訳者による新著が東京の大月書店から出版された。琉大の国際沖縄研究所による研究成果の一つとして、2年前から年1冊ずつ出版してきた『沖縄ジェンダー学』シリーズの第3巻である。これで全3巻が完結した。

 大月書店の担当編集者はNさん。その敏腕ぶりは職人の域だ。Nさんは全章の論文全てに目を通し、誤字や脱字はもちろん、文章の論理性、表現の適切さ、議論の説得力まで、徹底的かつ丁寧にコメントする。特に、情報の出処が明示されているかについては少しの漏れも妥協も許さない。編者と執筆者はNさんのコメントを参考に論文を修正するが、普段の静かで柔らかな物腰とは一線を画す鋭い指摘には専門家も舌を巻き、厳しいまでに的確な批評にイジケてしまう執筆者さえ出る。しかし、指摘に従って修正するうちに、いつのまにか数段格上の論文になっているのだから、それこそ「びっくりポン」なのだ。
 Nさんはぐうたらな執筆者に締め切りを守らせる妙技も心得ている。昨年12月、私は序章を書いていたが、締め切りを目前にしても文章の神様がなかなか降臨しない。「スミマセン、28日に間に合わないので、どうか延期を」と泣きつくと、Nさんは、「では30日までに」と優しく返す。心の中で「それでも年内かい」とぼやきつつ、30日にも間に合わずにさらに延期を請うと、「では年明け4日まで」と、やんわりお正月返上勧告。真綿で首を絞めるような追い詰め方は見事であった。
 春になり、ようやく出版にこぎつけた今回の本。堅めの研究書だが、ぜひ多くの読者のご批判を仰ぎたい。ちなみに、われわれの本の誕生を見届けたNさんは、今はパパとしてご自身のお子さんの誕生を待っている。ここにも春の芽吹きはもう間近なようだ。
(喜納育江、琉球大学ジェンダー協働推進室長)