<南風>光をそそぐ


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 私は写真の仕事のほか、ときに執筆や、デザイン、制作まで行うことがある。
 最近の仕事では、琉球紙の紙漉(す)き職人・安慶名清先生をご紹介するチラシの取材撮影から制作まで担当している。それをきっかけに、琉球王府時代から続く伝統の手漉き紙が、後継者の不足で危機的な状況にあることを知った。

 同じ伝統工芸のやちむんや紅型と同じくらい手間がかかっているのに、販売価格がケタが1つほど安価だからだろうか。また、手漉き紙の需要が減ってきているのは事実だが、例えば書道家や版画家やクラフト作家の方々に、沖縄県産の紙をもっと使用していただけたらと思う。このまま需要が増えず、安慶名先生の次の担い手がいなくなると、伝統の琉球紙が途絶えてしまう。
 安慶名先生も積極的に、次世代を担う子供たちに手漉き紙を体験してもらう機会をつくっている。学校や幼稚園の卒業証書や修了書を生徒自らが手作りするワークショップを通して、伝統工芸を学び、実体験していくものだ。
 先日も、大宜味村の喜如嘉小学校で芭蕉紙作りのワークショップが行われ、6年生は卒業証書、5年生以下は修了証書を手漉きした。喜如嘉といえば、糸芭蕉を原料にした芭蕉布が有名だ。芭蕉布作りでは使わずに捨てられる糸芭蕉の内側の皮を使って作られるのが「芭蕉紙」で、素朴で渋く、温かみが感じられる風合いが特徴的だ。琉球紙を代表するひとつでもある。
 今年3月で喜如嘉小学校は廃校となってしまう。地元を象徴する芭蕉を使い、自分たちの手で漉いた卒業証書は一生の宝物となるだろう。
 伝統工芸もまた宝物。宝物が埋もれてしまわないように、そこに光をそそいでいくのが私の本当の役目(仕事)だと意識していきたい。
(桑村ヒロシ、写真家)