<南風>Aくんとの7年間


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 地域で見守ってきた子どもたちも、小中高の卒業を迎えた。私自身も無事に課程を修め、沖縄女子短大を卒業できた。今後さらに地域の課題を把握し、子どもたち一人一人の援助や親の個別の課題に対応し、新たな支援をしていきたい。

 さて、学童で7年間過ごし、退所する小学6年のAくんのことを紹介したい。7年前のちょうどこの時期、Aくんの母から電話があった。「発達障がい児ですが預かってもらえますか」。電話の向こうの不安そうな声。Aくんは当時5歳。広汎性発達障がいという診断だった。他の学童に入所していたが、「行動面で問題がある。これ以上預かれない」と、保育料を返金されたという。あまりの理不尽さに驚いた。
 Aくんの母は初めての子育てで、「自分だけがこんなに苦労するのは自分の関わり方が悪いからだろうか」と悩み、自分を責めていたという。発達障がい児の子育ては困難が伴うことが多い。過敏さやこだわりが強い子は育てにくいことがあり、その大変さは周囲にはなかなか理解されない。子どもの様子だけを見て親の責任にされてしまうこともある。親は一人で問題を抱え込んで追いつめられ、孤独になってしまう。
 私はその日のうちに親子の面談をし、預かることを決めた。母親は目に涙を浮かべ、喜んでくれた。父親も安堵(あんど)したように「よろしくお願いします」と小声で言った。私は、「お父さん、お母さん大丈夫。Aくんが楽しく学童で居場所をつくれるように、一緒に頑張っていきましょうね」と伝えた。
 いろいろな出来事があったが、Aくんは大きく成長した。学習にも少し遅れはあったものの、Aくん自身がとても頑張った。少しハンディのある子は時間をかけて、根気強く指導することだと思う。振り返るとさまざまなことが思い出され、目頭が熱くなる。
(比嘉道子、NPO法人ももやま子ども食堂理事長)