<南風>今を感じろ!「幸せ」だ


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 好きで始めたお笑いですが、楽しくない時もあります。「笑いを取らなければいけない」と義務的に仕事をする時です。特に憧れの番組に出演させて頂(いただ)いた時は、笑いを取らないと、もう番組に呼ばれなくなる。そう考えると、自動的に「義務センサー」が発動します。すると、緊張し、とにかく苦しい。そしてその場を感じずに、前にウケた場面を思い出し、記憶に頼ろうとします。しかし、今の状況とは全く違うので、ウケるはずはありません。

 過去に「母親のエピソード」でウケたとしても、今のテーマが「政治」ならそれがウケるはずはないのです。ウケる時は、今を感じて思わず行動してしまったときです。「思わず行動」は、衝動であり、まさにその場で生まれるもの。だからその状況にマッチし、違和感なく笑えるものだと思います。
 ただ、その場を感じると言っても、丸腰のまま現場に行くような気持ちになるので、不安です。しかし記憶に頼ってしまったら、今までと変わりません。そこをしっかり理解して、自分という人間の力を信じたいものです。
 先日、俳優の西田敏行さんも同じようなことをおっしゃっていました。「台本は一応覚えるけど、本番はできるだけ忘れようとしている。相手の役者がどうくるか分からないからね」
 鮮明に記憶にある、「衝動的」に仕事をした場面は、僕らが準優勝した2010年の漫才コンテストです。緊張はありましたが、終始リラックスできました。純粋に僕らの活動を皆さんに見てもらいたい。そう思うと、不思議に平常心でいられました。でもなぜそう思えたのでしょうか。それは「幸せ」を感じたからです。憧れの舞台に立てるという「幸せ」を。
 義務的にする仕事をすることは、もしかしたら「幸せ」を見逃しているのかもしれません。
(内間政成、芸人 スリムクラブ)