<南風>「間」が生まれた瞬間


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 スリムクラブの漫才は、独特の「間」が良いね、と言われますが、狙って作った「間」ではありません。結成当初、僕はオーソドックスなツッコミをし、コントしかやっていませんでした。お笑いの常識で、できる限り激しくツッコミ、上手にテンポ良く切り返せるかばかり考えていました。

 しかし、どんなにやり続けても上手(うま)くいきません。相方のボケでウケても舞台上で違和感がある僕のツッコミで失笑。わざとらしかったんでしょう。自分もやりづらかったです。でも、それが正解だと思っているので、やり続けました。
 ある日、いつもの様にツッコんでいたら、突然相方が本番中にネタを止め「内間、もうツッコまなくていいよ。普段通りに俺の話を聞いて」と言ったのです。我慢の限界だったのでしょう。ネタに戻り、相方がボケました。僕は思わず「…そうなんですか」と普通の返しをしてしまったのです。すると会場は、体験した事のない予想外の大爆笑。スリムクラブの「間」が生まれた瞬間でした。
 結局僕は、固定観念にとらわれ自分を見失っていました。ツッコミをする性質の人間ではないので、どんなに練習しても上手くいかなかったのです。その点、今はものすごく楽です。
 「間」を身に付けた僕らは得意と思っているコントの大会に出ました。勝ち上がり、迎えた準決勝。芸人人生の中で一番ウケて敗退しました。ショックでした。もう終わったと思いました。
 あとは苦手と思っている漫才の大会があり、敗退したネタを漫才風に変えて出場しました。ダメ元で結果を求めず気楽に。結果は準優勝。不思議な感覚でした。苦手と思っていた分野で上手くいく。人生は分からないものですね。自分を決めつけず、自分らしく、軽い気持ちで挑戦していけば、自然と自分に合う世界が現れると思います。
(内間政成、芸人 スリムクラブ)