<南風>講師は笑わせなくても


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 セミナーや勉強会の講師は独自の工夫や持ち味があり、聴かせるものをもっています。
 楽しい講師、専門知識豊富な講師、5分ごとに笑いを取る講師もいますが、面白いけど内容は覚えていないこともあります。
 私には印象に残る2人の講師がいます。

 東京での研修会でした。大手鉄鋼会社出身で企業研修に詳しく、工程管理のようにプログラムを進めます。受講生を笑わせたり、気の利いたジョークなど言いません。
 グループ研究で受講生が安易に発表すると、「それでいいんでしょうか」と問い返す。みんなで再検討して答えると「本当に十分でしょうか」と繰り返す。メンバーは何度も考え、内容を深めることになります。研修終了後の感想は「笑わない先生だけど、いつも僕たちが主役になってるよね」というもの。主体的に考えさせるのはスゴイと思いました。
 もう一人は資格取得講座の講師です。高い合格率を狙って予算を組み県外講師を招聘(しょうへい)しました。経験豊富なだけに、講義スタイルはメリハリがあり、講師の見本にしたいほど。結果に期待しましたが、合格率は低く、上司からお叱りを受けました。
 さすがに次年度は、予算獲得できず県内講師に依頼。声も小さく、お世辞にもスマートとはいえませんし、何だか講義にも活気がありません。
 内心大丈夫かと不安になりました。ところが結果は期待以上。講師が良かったのかな。考えるに、講師に依存しては合格できないとの危機感で、受講者自ら学習したからではないかと。
 講師の役割って、雰囲気を盛り上げたり楽しくすることだけではないようです。生徒が自ら考え、主体的に学ぶように仕向けることがいい講師の条件ではないかと思うのです。
(青山喜佐子、オフィスあるふぁ代表)