<南風>自然の中に生きている


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 畑をするときに一番大事にしていることは水の流れである。私の畑の一つは正方形で、中央が一番高く、そこから四辺に向かって緩やかに下がっている。中央が高いので排水をあまり意識していなかったが、私の畑の先生は、あちらこちらと畑の土を手に取り、匂いを嗅いで「この畑は中央に水が溜(た)まりやすいから、中央に溝を切って畝立てしなさい」とご指導いただき驚いた。高い斜面に水が溜まる意味が分からなかった。

 なぜか。先生と一緒に、土の匂いを嗅いだり穴を掘ったりした。私は見えないところまで意識が回っていなかった。以前から「五感を使って農業しなさい」と言われていたが、こういうことかと腑(ふ)に落ちた。
 畑を始めてからは、水の流れ、風の吹き方、生えてくる雑草、虫、雲など今までは気づきもしない身近な自然の変化に意識がいくようになった。例えば、家の前でトンボがたくさん飛ぶときがあり、子どもたちと素早いトンボ取りに夢中になる。そんな時あることに気が付いた。台風が近づいてくるときに、トンボがよく飛ぶのである。それから意識してトンボをみると沖縄近辺に低気圧があると家の前をよく飛んでいるようだ。
 今では低気圧が近づくと娘たちからトンボ取りできるかなと話が出てくる。台風の前はとても静かだったり夕暮れが綺麗(きれい)など、目や耳、体感からもそういう情報が意識化される。ふとしたことで自然について気付けることはたくさんある。先人が付けた地名が過去の災害や地形の由来になっていることからも様々(さまざま)なことを学べる。普段から自然を意識すること、そのために自然に触れて感じる体験を重ねれば、いざという時に大事な直感が働くと思う。
 日々生活をしているとつい忘れがちだが、自然の中で生きているということ、自然に敬意と畏怖の念を持つことが重要だと思う。
(玉城真 うえのいだ主宰、珊瑚舎スコーレ美術講師)