<南風>“経過報告”


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 4月中旬、北京から送られてきたメール。ある会議のパネリストの一人に、私の名前も記されていた。議題は「音楽の輸出について知っておくべきすべてのこと」。毎年4月下旬に北京で開催されている音楽イベント「サウンド・オブ・ザ・シティ」には、世界のワールドミュージックの関係者がやってくる。

 沖縄音楽を海外に紹介し、アジアでの音楽ネットワークを作る作業を始めてまだ2年。今回の議題について語れるほどの経験もなく、結果が残せているわけでもない。難易度が高いと思いつつ北京へ向かった。
 座長は世界的なワールドミュージックの見本市WOMEXのディレクター、クリスティーナ。彼女に難題だと話すと、「沖縄でやっている現段階のことを話してほしい。中国の人たちにも参考になると思うから」
 ベルリンの事務所で彼女に会ったのは一昨年の夏。かなりの時間を割いて、現在の世界の音楽シーンと、音楽を広げるためにやるべきことについてレクチャーしてくれた。以来、沖縄の状況を気にかけてくれていて、変化の兆しがあることも理解してくれている。今回の登壇は、その経過報告みたいなものなのだろうと解釈した。
 登壇者は、ドイツ、スイス、ロシア、ポーランド、ポルトガルに日本(沖縄)という顔ぶれ。実績十分の各国の登壇者に囲まれて、自分たちのそのままの現状を話した。沖縄音楽のアウトライン。海外の音楽関係者に沖縄音楽を伝え、地元の理解を深めること。その中で生まれた小さな結果。一方通行ではなく、双方向での関係性を構築する大切さ。そして、一歩ずつ続けていくということ。
 うまく伝わったかは分からないが、会議の後に何人かに声をかけられて、メールが届いて以来、重苦しかった気分に、ようやく晴れ間がさしたようだった。
(野田隆司、桜坂劇場プロデューサー・ライター)