<南風>アイオワ大学への留学


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 大学院2年の途中から、心理統計学の一大拠点である米国アイオワ大学に編入学しました。東大教育心理からは、先に繁桝算男(かずお)、渡部洋の両氏(ともに後に東大教授)が留学しており、特に渡部さんは私の留学時にまだ在籍していて、いろいろな面でお世話になりました。留学に際しては、肥田野直(ただし)、東洋(あずまひろし)、芝祐順(すけより)という日本を代表する先生方の推薦を受けていましたので、その先生方の名前を汚さぬよう、土日を含め週80時間以上の勉強を留学期間中、継続しました。

 在学中にテスト理論の適用に関する新しい方法を考えつき、それが博士論文につながりました。その方法は「Haebara Method」と呼ばれ、発表後30年以上たった今も使われています。その論文でアイオワ大学から表彰され、前年に学業成績で表彰されたのとあわせ、大学の建物内に受賞者として名前が刻印されています。
 博士課程修了後、すぐにアイオワ大学大学院で統計学の授業を担当しました。聴講した学生の一人は、現在アイオワ大学の教授になっています。英語での授業ということもあり、詳細なノートを作って臨みました。特にジョークの部分は赤ペンでハイライトし、すべらないよう練習しました。その最初の授業が28歳のときで、それから34年間にわたって統計教育に携わっていることになります。ジョークを大事にする点はずっと変わっていません。
 アイオワでの授業を2学期間担当した後、新潟大学への採用が決まり、4年2カ月ぶりに帰国しました。生後8カ月の息子も一緒です。11年間過ごした新潟では、よく「沖縄から来られたのなら、新潟は寒くて大変でしょう」と声をかけていただきました。しかし、アイオワの冬は新潟の比ではなく、零下20度以下もしばしばでしたので、まったく苦になりませんでした。
(南風原朝和、東京大学理事・副学長)