<南風>公園でひとりの少年に出会う


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 「ももやま子ども食堂」で、地域の子どもたち一人一人と向き合い、寄り添い、支援し、日々を楽しく過ごしてきた。気付けば活動を試みてから1年を迎えた。

 子どもの健やかな成長には、大人の力を結集して地域で子どもたちをはぐくむことが大切だと感じる。そのためには、親が「自分の子どもは自らの責任で健全に育てる」ということが大切である。親自身も地域の大人として、地域ぐるみで子どもを育てていく環境づくりに参加する。子どもたちが安全に活動ができる居場所づくりが必要である。
 先日、公園でひとりの少年に出会った。子ども食堂に行くことができない子どものひとりである。少年は遠くから私をじっと見つめていた。視線に引き込まれるように少年に近づいていった。私は、何気なく「久しぶりだね、元気だった」とほほに触れた、少年は笑顔もなく返事もしない、ただ頭をコクリとさげた。いつも独りで遊んでいるという。
 「お母さんは元気でお仕事頑張っている」。母親の話をすると少し笑顔になった。母親は深夜の仕事で夜は幼い兄妹だけで過ごすことが多いと言っていた。「今度、おうちに行ってもいいかな、お母さんにも会いたいから、お弁当作って持って行くから、みんなで一緒に食べようか」。少年は顔を上げて嬉(うれ)しそうに、「ほんとに、ほんとに」と繰り返した。私は胸が熱くなった。必ず行くからねと、少年と約束をした。少年は「必ずだよ!」と言いながら走って行った。
 子どもにとって、食事はからだの健康だけでなく、こころの成長にも深く関わる。家族や誰かと一緒に食事することによって、家族のふれあい、食事のマナーなど社会性を深めることにもつながる。子どもたちと一緒に食事を「作る」「食べる」ことを通じ、食に関する知識や豊かな心をはぐくんでいきたい。
(比嘉道子、NPO法人ももやま子ども食堂前理事長)