<南風>後悔しない道を行こう


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 35歳の頃、仕事中心で家庭はどちらかと言えばそっちのけの時期があった。過労がたたり救急で運ばれた。ふとよぎった。「え? 死ぬの? このままでは後悔だけが残る」。まさか俺が…。世の中の30代の中でも体力だけは絶対的な自信を持っていたのに。まさに青天のへきれき。激しいめまいの中、必死に祈った。

 「これからは世の中のために何でもします。だから助けてください。もう一度チャンスをください」とずっとお願いしていた。結局、後遺症もなく大事には至らなかったが、約1カ月近く入院した。しばらくは寝た切り状態。その時、当時の小学校3年の長女から手紙をもらった。「お父ちゃんへ、いつもおしごと、ここの(末っ子の娘)のめんどうをみてくれておつかれ、ありがとう。いつもあまり休めずちゃんと休ませてあげなくてごめんね。でもお父ちゃんがかえってきたら、ちゃんと休ませてあげるからね。きよかより」。ベッドの上で読み終えて泣いた。

 入院中、思った。「退院したら友達をたくさん作ろう!そして今度は後悔しないように自分のやりたいことを思いっきりやろう!」。現在、一般社団法人アスリート工房とし、身障者も健常者もたくさんの人が走ることを生涯スポーツとして楽しめる環境を目指して活動をしている。4歳~76歳まで幅広い年齢層がそれぞれの夢に向かって頑張っている。ダイエットや健康運動を行うコース、そして障がい者アスリート(知的、身障者)コースなどもある。

 県内初の女子社会人陸上チームをつくったり、身障者アスリートが健常者のジュニアにコーチを行ったりと、新しい試みも展開中だ。健康という恵みへの感謝の気持ちをベースに持ちながら、後悔しない道を行く!それがテーマかな。あの時もらった娘の手紙は宝物として今でもカバンの中で僕を応援してくれている。
(譜久里武、アスリート工房代表)