<南風>希望への懸け橋


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 沖縄の子どもの貧困率の高さには、海外のウチナーンチュも心を痛めている。先日、ハワイ大学で教員をする沖縄系アメリカ人の友人が、沖縄の参考になればと、ハワイ大学の取り組みについて教えてくれた。

 「希望への懸け橋」と称するその事業は、州から福祉援助を受けているシングルマザーの中から、年間数十名をハワイ大学で学ばせ、学士号の取得を支援する取り組みである。学びながら、非常勤職員としてハワイ大学で働くことができる。
 学位と就労経験の両方が評価され、卒業後の就職も好調らしい。追跡調査によると、入学前の年収が平均200万円未満だった母親たちの卒業後の平均年収は、2倍の400万円とのこと。ちなみに、この事業で入学した学生(母親)の授業料や賃金は、すべて州の福祉関係予算で賄う。沖縄なら、県と琉大の連携事業といったところか。
 「希望への懸け橋」は、貧困状態にある子どもの直接的な救済というより、子どもの貧困の原因となる親の貧困、特に女性の貧困をどうにかしたいという思いから生まれた事業である。
 ただし、こうした女性の就労支援事業が成功するには、米国社会のように、年齢に関係なく、経験や技能を基準に女性を採用する雇用者の存在が必要だ。女性がいくら努力しても、受け皿の社会が、相変わらず若手や男性ばかりを採用するのでは意味がない。
 子どもを育てあげる責任は親だけではなく社会にもあることは確かだが、それでも、わが子の身体と心を真っ先に守れる大人は、まず親であると信じたい。
 子どもの笑顔を守るためにも、「良妻賢母」を押しつけられて迷惑してきたという女性は、「賢母」の意味を今一度問い直し、男性は、前代未聞級の「良夫賢父」として、家庭や社会における男性の役割を見直す時が来ているといえる。
(喜納育江、琉球大学ジェンダー協働推進室長)