<南風>いい挨拶をしたいのですが


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 挨拶(あいさつ)上手になりたいと思っている人は多いです。

 挨拶が短いと、それだけで「良かった」と言われ、時間オーバーして「甚だ簡単ではございますが」などと締めると、「長かったね」という印象だけが残り、話の内容は覚えていないことがあります。

 挨拶となるとつい緊張して、話し方や姿勢など形から練習するのですが、それがとっさの場面でなかなか表現できません。いい挨拶を聴くたびに、「この人のように話そう」と決意しても、しばらくするとすっかり忘れて、挨拶が終わったとたん、「あれも言えば良かった、あのことも忘れていた」と反省だらけの繰り返しです。

 先月、中国の北京を訪問した際の北京大学の教授の挨拶です。「有朋自遠方来 不亦楽」(中国語で)。通訳によると「中国のことわざで朋(とも)有り、遠方より来たる。また楽しからずやと言葉があります。遠い沖縄から北京まで訪ねて来たことは、とてもうれしい。兄弟に会えたようです」。感情を込めて自然な態度で。簡単な言葉ですが、気持ちが伝わって感動しました。

 経営者は、挨拶の機会が多く、トップのメッセージには、聴く側も大きな期待を寄せています。「どんなビションを伝えるのか、何を期待しているのか」と。それが型通りであったり、原稿を読むだけであったりでは思いが伝わりません。

 尊敬する上司の入社式の挨拶は今でもよく覚えています。「入社おめでとう。わが社はいい会社です。いい会社というのは規模が大きいとか利益があるとかではなく、切磋琢磨(せっさたくま)する先輩、後輩、同僚がいてお互いに成長できる会社です。その意味でわが社はみなさんを迎えてさらにいい会社になるでしょう」。先輩として襟を正す機会になりました。

 聞き手を大切に思うことがいい挨拶の一番の条件かもしれません。
(青山喜佐子、オフィスあるふぁ代表)