<南風>多様性を活力に


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 元日号を皮切りに隔週で書かせていただいたこのコラムも、今回が最終回となります。コラムの執筆をきっかけに、新しいつながりも生まれました。母校の壺屋小学校の創立70周年記念のことを書いた後、校長の友利宏先生から、戦後まもない創立の頃に先生方が手書きでつづった沿革史の写しをいただきました。「日本内地へ通信開始」など、当時の空気が伝わってくる記載があります。また、昨年このコラムを担当された関東沖縄経営者協会の仲松健雄会長は東大へお越しくださり、6月17日開催の協会50周年記念大会に招待してくださいました。

 これまで、私が大学で学生支援、入試、環境安全を担当していることについては触れてきましたが、その他に、男女共同参画とバリアフリーの推進も担当しています。この二つは、性別や障害の有無にかかわらず、学生や教職員が、快適な環境のもとで勉学、研究、教育、職務に専念できることを目標にするもので、大学における構成員の多様性を尊重し拡大していくうえで重要な任務です。大学が多様な人々から構成されることによって、多様なアイデアが創出され、また、その中で各自が自己を見つめ直すことなどを通して、組織の活力が生まれます。
 その観点からすると、現在の東大は、女子学生の比率が2割に満たないこと、首都圏のいわゆる進学校からの入学者が多いこと、また女性教員の比率も十分でないことなど、課題が少なくありません。このうち入学者に関しては、新たに導入した推薦入試が、全国の高校から男女一人ずつ推薦できることとしたこともあり、改善の兆しが見えますが、一般入試を含め、より広い層から志願者が集まることを期待しています。
 沖縄からももっと多くの生徒に東大にチャレンジしてほしいと願っています。ぜひ頑張ってください。
(南風原朝和、東京大学理事・副学長)