<南風>食事と漢方


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 最近の健康ブームから漢方薬への関心も高まり、メタボでダイエット効果を期待して来院される方も少なくない。たしかに排泄(はいせつ)に重きを置いた漢方薬もあるが、肥満治療の基本は食事だと強調している。最近は炭水化物や糖分などいわゆる糖質を制限して、脂肪の消費を高める低炭水化物ダイエットを勧めている。

 これで患者さんに教えられたことがある。朝起きた時気分がよく、体が軽く、やる気が出るという気持ちの変化が起こることで、糖質の摂(と)りすぎが気分の落ち込みにも影響していたことを知り、あらためて食事の重要性を認識したのである。

 漢方では薬の効能に合わせた食事の指導をする。甘い糖分は腎の働きを抑え、水の排泄を妨げ、体を冷やすとされる。色白で脚腰が冷え、生理痛が強く、むくみやすいなどの症状がある場合には甘いものを摂りすぎている場合が多い。また湿疹など皮膚の病気にも甘いものは悪いとされている。

 一方、ピリ辛の食材は温める作用が強いので、顔が真っ赤になる炎症を伴う皮膚の病気の人などでは、アルコールやトウガラシなどで症状が悪化しやすい。慢性前立腺炎や痔などの場合にもお酒が悪いことは多くの患者が教えてくれた。

 薬食同源という言葉に見るように、食材にも体を冷やしたり、温めたりする働きがある。漢方薬の効果を最大限に引き出すには、病気の成り立ちに合わせた食事指導が必要だ。その際、大いに参考になるのが琉球王国時代、渡嘉敷通寛がまとめた「御膳本草」(1832年)で、沖縄の身近な食材の効能を紹介している。

 もち米には「中(胃腸)を補い気力を益(ま)す」一方「瘡気(できものがでやすい)のある人は食うこと忌む」、胡椒(こしょう)には「臓腑(ぞうふ)の風冷気を除き、多く食えば肺を損じ、気を散じ、瘡(かさ)を生じ」と薬効と害になる作用に触れて、大いに参考になる。
(仲原靖夫、仲原漢方クリニック院長)