<南風>伝えることが僕の使命


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 ときどき、「自分の仕事の役割は何だろう」と自問自答することがある。
 カメラという機械とか、写すという行為よりも大事なことは何か。取材撮影の対象となる人や風景などにピントを合わせている被写体となるものの、もっと背景にあるものまでをフォーカスしたいと思う。むしろカメラはただのツールで、自分にとっての“表現”とは「背景までひき出して“伝えられるか”」に尽きる。

 それを伝えるためにどうするか。己を無(空)にして、真っ白な媒体になる。その方法はかなりシンプルで、ただただ手を合わせる。
 まるで仙人か修行僧のように聞こえるかもしれないけれど、私のちょっとしたルーチンだ。とくに取材撮影に出掛ける前とか、原稿を書きはじめるときに行うことが多い。するとどうなるのか?
 私は私でしかないはずなのに、我が無くなっていく。例えば、風景を撮影していくと自然と同化していくような感覚であったり、執筆の場合も言葉が降りてきたりするような感覚だ。
 そのようにして自然を写した写真を、洞窟の中にあるカフェ(ガンガラーの谷『ケイブカフェ』/南城市前川202)で、写真展『シマとの対話』として、今年の9月から12月まで開催予定だ。
 天然の洞窟なので夏場は涼しく、雨が降った後は湿度が高くなったりと環境は刻々と変化するので、展示する写真にとっては少々過酷かもしれない。
 だが、もとは自然を切り取って写した写真であるので、自然に還(かえ)っていくような展示になっても良いのではないかと思っている。
 自然と同化していく写真展にて、写真と対話するように眺めていただきたい。それぞれの写真の中からメッセージを感じ取り、そこから何かが伝わったとしたら幸いである。
(桑村ヒロシ、写真家)