<南風>今帰仁の花をどうぞ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 今年3月。山原の地に激震が走った。今帰仁村歴史文化センター館長を20年勤めた仲原弘哲氏が退任し、後任になんと石野裕子が就任するというのだ! デージなってるーと誰もが驚き心配した。

 「仲原館長がいなくなったらどうなるの?」(石野じゃ頼りないし)「今帰仁の歴史文化について、誰が専門的に教えてくれるの?」(石野じゃ足りないし)
 そのことを一番知り尽くし、ビビッていたのは、ほかでもない自分自身なのでした。研究者でもない私が博物館の館長だなんて。しかも仲原館長の後任だなんて。ハードル高過ぎ!無理むりムリよ!
 事情を知った方々から励ましの言葉もたくさん頂きましたが、不安と恐れからの「聞こえない声」の方が、ずっとリアルに心を縛りました。仲原館長と自分を比較し、期待に応えられないであろう自分を責める声に、眠れない夜と鉛の心…。
 そんなある日。職場の駐車場から車を出すと、知り合いのお兄ちゃんが歩いていたので、窓を開けて声を掛けました。お兄ちゃんが私に気付き、にっこり笑って手を振って、大きな声で、「館長になるんだってねえ。嬉(うれ)しいさぁ。応援するよ」
 とたんに空がぱあっと晴れて、360度、ひまわりの花に囲まれました。「嬉しい」と言ってもらえることが、こんなに嬉しいことだなんて。笑顔で「応援する」と言われることで、こんなに元気が出るなんて。ひまわりは、応援してくださる皆さんの気持ちの花。
 素直に励ましを受け取って、日々の仕事の中で感じる楽しさや喜びを差し出すことなら、「ナンチャッテ館長」にもできそうです。 就任して3カ月。予想通り、オタオタあたふたの毎日を過ごしています。ドーパガー(間が抜けている)館長が見つけた今帰仁の花々を、皆さまにお届けできることが嬉しいです。
(石野裕子、今帰仁村歴史文化センター館長)