<南風>Tシャツからはみ出た天使


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 ハワイでの新生活は、発見の連続だった。今までの常識が常識ではなくなる。そして、常識が崩れた後に残るのは一つ。自分の意識だけだ。きょうは、私とTシャツからはみ出た天使との出会い、そして、その後、私に起きた意識変化を紹介したいと思う。

 どうしても気になることがあった。その厄介物は、気付いたら自分の感情までをコントロールしていた。テレビ・雑誌が作り上げた理想像のせいなのか、コイツは常に頭の中に潜んでいた。そう、ダイエットである。食べ過ぎれば、罪悪感に襲われ、朝1キロ増えていれば、その日はいい日になるはずがなかった。
 ハワイへ来てまだ間もない頃、会社のロビーで立っていると、ソファーに座っていた女性に声をかけられた。彼女はいかにもハワイアンという感じの体格に、ビーチサンダルとTシャツのラフな装いだった。
 「Why don’t you sit down and relax?」。こっちに座ってリラックスしたら?多分そんなことを言っていたと思う。まだ環境に慣れない私が、こわばって見えたのかもしれない。
 私は「Thank you.」と言って彼女の目の前に座った。そんな彼女のTシャツからはおなかがはみ出し切っていた。私は目を疑って、5度見してしまった。しかし彼女は、そんなことを全く気にもせず、明るく、幸せなオーラを放っていた。
 自分は今まで何を気にしていたのか。体重1キロに気持ちを浮き沈みさせていた私に比べ、彼女は何十倍も幸せそうだった。私の常識は音を立てて崩れた。
 それからのハワイ生活? おいしい料理をたくさん食べた。ただ、今までと違うことは、最高体重を記録したにもかかわらず、幸せだったということである。
 あなたの感情も、知らず知らず、厄介物に支配されていませんか?
(比嘉具志堅華絵、ハワイ沖縄連合会会員、『SHINKA』副会長、1級建築士)