<南風>風を集めよ! 北山の花たちよ!


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 現代版組踊「北山の風」は、世界遺産今帰仁城に伝わる伝承をもとに創作され、今帰仁・山原の子どもたちによって演じられています。

 原作は、2014年に96歳で他界された今帰仁村字諸志(しょし)出身の新城紀秀(きしゅう)先生が手掛けました。抜群のユーモアとちゃめっ気にあふれ、広い心と、謙虚で柔らかい向学心は、出会う誰をも引き付け、どこに行かれても、いくつになられても、大勢のファンに囲まれていました。
 敗戦直後の昭和21(1946)年、当時今帰仁小学校教頭だった紀秀先生が、子どもたちに郷土の誇りを取り戻させようと、渾身(こんしん)の思いで書いたのが脚本「北山」です。2010年、平田大一さんのアレンジで「北山の風 今帰仁城風雲録」としてよみがえりました。
 物語は、中山王尚巴志がなかなか攻め落とせない今帰仁城を滅ぼすため、一計を案ずる場面から始まります。よく知られた伝説をもとにしながら、最後は希望と情熱をもって、命芽吹く新たな北山を創る決意で幕となります。
 今帰仁城の雄大な石垣を背に、演じる子どもたちの喜びが空の限りに広がっていく。戦後のすさんだ状況のなかで、教育者として、一人の大人として、これからの「生きる」を背負った子どもたちに忘れてほしくなかった「花」、紀秀先生ご自身も取り戻したかった「花」があった。その開かんとする力が、時代を超えて、私たちに手渡されているのです。
 先生がこの舞台に間に合い、鑑賞していただいて、本当によかった! はじける笑顔で「みんなありがとう。僕は幸せだなあ。これで故郷に恩返しができた」という紀秀先生の声が聞こえます。
 風を集めて 高き山越え
 情熱の詩 北山の風
(北山の風テーマソング)
(石野裕子、今帰仁村歴史文化センター館長)