<南風>私と私のコミュニケーション


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 コミュニケーションとは他者との言葉のやり取りである。確かにそうではあるが、実はもっと大切なコミュニケーションがある。それは、「私と私のコミュニケーション」だ。良好な人間関係を築く基礎ともいえる。

 「私と私のコミュニケーション」とは何か。誰かと話をするとき、あるいは本を読んだとき、映画を見たとき、人は「言いたいことは何だろう」とか、「きっと◯◯に違いない」などと、自分自身の中で自問自答しながら過ごしている。自分自身とのコミュニケーションを経て自分なりの解釈や解決を考えている。
 私の若い頃の話になるが、社会人になって3カ月で仕事を辞めようと思ったことがある。うまく仕事ができない焦りと不安から、この仕事は向いていないのではないかと考えたからだ。そのことを思い切って先輩アナウンサーに話すと、言い終わらないうちに「3年たってものを言いなさい」と一喝された。
 まさかの言葉にオロオロした私は、「まずい。怒らせてしまった」「でも何が悪かったのだろう…」「私のことが嫌いなのかな…」等、否定的なことばかりが心の中に浮かんだ。私は不安感情でいっぱいになった。
 これまでの先輩とのやり取りを思い出しながら冷静に考えてみた。「私に何を伝えたかったのだろうか」「なぜあのようなことを言ったのか」。そのうち違う解釈ができることに気付く。
 もしかすると、「あれこれ悩む前に目の前のことに集中して、とにかく3年頑張ってみなさい」ということかもしれない。鬱々(うつうつ)とした気持ちが消えた。うまくいっていなかった「私と私のコミュニケーション」が前向きなものに変わった。
 それから、物事を見聞きする際は一面だけでなく、さまざまな面から捉えるよう、「私と私のコミュニケーション」を大切にしている。
(吉田文子、シニアコミュニケーションカウンセラー)