<南風>与那原大綱曳の力(1)


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 今年も与那原大綱曳まつりの季節となりました。
 2012年、沖縄本土復帰40周年かつ大正区制80周年の記念すべきこの年に、大正区は、NHK連続テレビ小説「純と愛」の舞台地に沖縄県宮古島市と共に選ばれました。この機会に、沖縄のおおらかさと大阪のイチビリ(お調子者)精神でまちを盛り上げようという、沖縄+大阪(ナニワ)=「おきナニワんプロジェクト」が始まりました。

 それに伴い区民意見交換会も開催し、その場で沖縄出身の高齢のご婦人の方が「子供の時に沖縄で見ていた大綱曳が忘れられない。大正区でも大綱曳をしてほしい。たくさんの人が来る。みんなが喜ぶ」と話されました。その訥々(とつとつ)とした語り口に胸を打たれ、大綱曳を区制80周年記念のメーンイベントにという動きが始まりました。
 大正区では2004年に与那原大綱を船で送っていただき大綱曳を開催しています。その時に大正区で中心的に企画運営をされた関西沖縄文庫主宰の金城馨さんに相談し、一緒に与那原町に伺(うかが)い、古堅國雄町長に大正区での再度の与那原大綱曳開催を依頼し、快諾いただきました。
 初めて見た与那原大綱曳では、六尺棒に生命を吹き込まれた大綱は龍が躍るかのように見え、震えるほど感動しました。
 500年近い伝統を有する与那原大綱曳はただの集客イベントではありません。神聖なる行事の重みを伝えるため、大正区では子供たちが藁(わら)から綱を編む体験をし、意義も学びました。大綱曳本番は2日で5万人の人が集まる大盛況となり、夜には切った綱を体に巻いた人々がまちに溢(あふ)れました。
 来る7月30日、与那原町と大正区は大綱に繋(つな)がれた縁を実らせ、友好交流の覚書を締結します。しかし、ここまでの道は決して平坦(へいたん)ではありませんでした。
(筋原章博、大阪市大正区長)