<南風>新たな製造業の台頭


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 中城湾港の国際物流拠点産業集積地域に立地する賃貸工場に入居する企業が増えている。その数は既に50社を超えた。ほとんどが製造業であるが、業態はさまざまだ。精密機械、半導体、計測機器、エンジン、小型焼却炉、強化タンク、特殊木材、健康食品、冷凍食品などで、製造業の要である金型製造業が十数社ある。中には、キャンピングカー、釣具、パン缶詰といったユニークな業態もある。

 時々、入居企業を訪れるが、個性ある製品や技術が多く、業界に携わる者として、沖縄にはこれまでなかった新たな製造業が起こってきたことを頼もしく思っている。
 国際物流拠点地域は製造業及び貿易を振興する経済特区である。工場用地の分譲もあるが、賃貸工場は初期投資が軽減でき、賃貸料も比較的安いという理由で入居希望者が多い。ただ、入居するには、生産品の5割以上は基本的に輸出するという条件が課せられる。つまり、入居者には輸出型企業として外貨獲得の期待がかかる。これが経済特区に立地する新しい製造業の役割だ。
 2009年、ANAが国際物流ハブ事業を開始した。那覇空港を拠点に国内とアジア主要空港を結んでいる。上記企業の中には、沖縄進出の理由に、このANA事業の存在を挙げるところもある。さらに、海上輸送では、琉球海運が台湾を中継地として世界各地へ貨物を転送する仕組みを構築した。こうした海外輸送網の拡充は、企業誘致を進める上でも、大きなアドバンテージになる。
 かつて、南の端の沖縄は「製造業不毛の地」と揶揄(やゆ)され、投資も企業誘致も進まなかった。しかし、沖縄に吹く風が変わった。特区の製造企業には、ぜひとも素晴らしい成果を出して、「不毛の地」という不名誉なイメージを吹き飛ばしてほしいと願っている。
(桑江修、沖縄県工業連合会専務理事)