<南風>一つ屋根の支え合い


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 沖縄には160もの島々がある。そのうち有人島で高校がない島が35島あり、毎年、那覇市近郊に約150人が進学している。しかし、経済的な理由での進路変更や生活リズムの乱れから、部活動や学業に専念できないなどの課題があるようだ。

 私たちは、こうした生徒や遠隔地から進学する生徒と1人暮らしの高齢者が互いに支え合う共同生活のプロジェクトを始めた。生徒にとっては生活費の経済的な負担軽減やしっかりとした食事が提供され、頼れる大人が身近にいることで勉強や部活に集中できるメリットがある。高齢者にとっては買い物や台風時の片付けなど身近な生活支援を担ってもらえ安心である。互いに「自分のできること」を持ち寄り課題解決の一端を担う取り組みだ。
 先日、十数年ぶりに伊江島出身の同級生の実家を家族と共に訪ねた。彼は故郷を背負っているかのような芯の強さがあり、多くの刺激を受けてきた。実家の方々の気さくで温かい人柄に触れ、息子と豊かな海に漂うと、もう満ち足りて何もいらない。こういった島の魅力も顧みる受け入れができたらと思う。
 高齢者の側はどうであろうか。沖縄県は65歳以上の方が18・5%。那覇市では27・4%でうち1人暮らしの人は、1万1367人となっている。高齢者といっても、公民館では地域の学びを支え実践する大活躍の世代である。普段、元気であっても転倒や急病、災害時には誰がどのように支えていけるのだろうか。地域で継続的に見守れる仕組みが求められている。
 価値観の違いですれ違うこともあるけれど、縁あって一つ屋根で暮らす家族。家主さんの一人は「人生に活力を与えてくれた」と言う。その言葉に勇気づけられ、少子高齢化社会の中、若者を育み、沖縄らしい地域福祉に挑戦している。
(南信乃介、NPO法人1万人井戸端会議代表理事)