<南風>敬老会であやかるもの


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 「自分を大事にしなさい。」。那覇市織名の自治会長を務めている平良重三さんは、優しく、そして繰り返し中学生に語り掛けていた。過酷な戦争経験を語った直後だった。しぐさやまなざしから、人生を凝縮した大切なメッセージであることが伝わってきた。

 中学校の平和学習をサポートした時の話だが、今月、地域の敬老会に参加した際になぜか頭に浮かんだ。150人を超える参加者の中、生年祝いの方々が招かれ、舞台の上では地域挙げての演舞が披露される。終始和やかで温かい空気に包まれる。今、元気に生きていることが全面的に肯定される空間だからなのかもしれない。前述の自治会長の言葉を借りれば、「自分を大事にする」ことを地域で大事にする日とも思える。

 今、県立看護大学が那覇市繁多川の20歳以上の全住民に対し、日常生活に関するアンケートをとっている。米ブリガム・ヤング大学による最新の調査結果では、社会的な孤立を感じている人はそうでない人と比べて健康を大きく脅かしているという。タバコや飲酒、肥満のリスク以上の影響があるというから驚きだ。日常生活を調べることは、健康長寿のヒントを立証する可能性が高いようなのだ。

 この日、敬老会に招かれた方や参加した方、裏方で支えた方は、間違いなく「社会的孤立」と懸け離れた環境に違いない。公民館や自治会で活動する人も同様だ。アンケート等でその傾向が出れば、沖縄の地域社会の仕組みが世界の健康づくりに寄与するだろう。

 各地で開催される敬老会ごとに、一人一人の「自分を大事にする」精神やライフスタイルが認められ、健康長寿にあやかる場として継承されていることを誇りに思う。これは地域に根付いた最高の健康習慣かもしれない。
(南信乃介、NPO法人1万人井戸端会議代表理事)