<南風>熱水鉱床 沖縄近海の海底資源


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 沖縄でははるか遠い東の海のかなた、あるいは海の底、地の底の異界のことをニライカナイと呼び、そこからやってくる神は豊穣(ほうじょう)をもたらすという伝説がある。その神は現実となって現れるか。

 近年、沖縄近海の伊是名沖、久米島沖の深度1600メートル前後の海底で次々と熱水鉱床が発見された。これまで、伊是名沖で3カ所、久米島沖で2カ所の計5カ所の熱水鉱床が確認された。

 熱水鉱床とは、海底のマグマ活動のある場所に海水が染み込み、熱せられた海水によって、マグマや地殻に含まれる有用な元素が噴出し、冷却、沈殿した鉱床のことである。

 その鉱床には、銅、鉛、亜鉛、金、銀など貴重な鉱物が埋蔵される。世界の陸上における鉱物資源の枯渇化が進み始めた今、海底の鉱物資源に大きな注目が集まる。これまでの調査で、沖縄近海の熱水鉱床は、規模、資源量において国内最大級との報告がされている。

 政府は、2008年3月に「海洋基本計画」を策定し、「いまだ商業化していない海底熱水鉱床について、今後10年間を目途に商業化を実現する」という目標を定めた。その計画に基づき、有望な熱水鉱床の資源量、環境影響、資源開発技術、製錬技術の調査研究を進めてきた。探査専門機関の調査の結果、伊是名沖の熱水鉱床は資源量が大規模であり、実証実験を実施する候補海域として、優先順位1位にすべきとの報告書が出された。

 それを受けて、来年度から伊是名沖海底の鉱石を引き揚げて、商業化の実証実験を始める計画になっている。さて、この熱水鉱床は沖縄に経済的利益をもたらすだろうか。

 今年の沖縄の産業まつりの「沖縄の海洋産業特別展」で、この「熱水鉱床」を映像と模型で詳しく紹介する。次回コラムはこの特別展の内容を紹介したい。
(桑江修、沖縄県工業連合会専務理事)