<南風>100%同士の2人


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 「夫婦は、100%、100%でなければならない」。高良さんは、私たち夫婦に何度も繰り返した。

 先日、ハワイ沖縄連合会の家系図研究会に参加した時、向かいに座っていたウチナーンチュ2世のチック高良さんが話しかけてきた。

 「2人は結婚何年目?」
 「2年目です」
 「まだ新婚さんなんだね」

 87歳の高良さんは、アーティスト。若々しく、ハンサムな方だ。財布から奥さんの写真をひっぱり出し、見せてくれた。「彼女は再婚した妻。僕と27歳も離れてるんだ」その年の差には、私も夫も驚いた。

 「最初の妻は、癌(がん)で亡くしたんだ」と、私たちに語ってくれた。

 奥さんの癌は全身に転移した。末期となった奥さんの看病に尽くすある日、高良さんは、沖縄で開催される展示会に招待された。断ろうと思っていると、「すべての出来事には理由がある。あなたの帰りを必ず待っているから、行ってきなさい」と、奥さんに背中を押され、4日間沖縄へ飛んだ。

 「沖縄から帰ってくると、妻はもう昏睡(こんすい)状態で、話もできなかった。ぐっと顔をこわばらせ、痛みに耐えていた妻に、『何も心配しないで』と声をかけた。すると、頬が赤らみ、笑みを浮かべ、今まで見たこともないほど美しい表情を見せ、そのまま眠ったんだ」

 まるで奥さんの表情を、今見ているかのように、鮮明に語ってくれた。気がつくと、夫も私も、涙を流していた。そして、こう続けた。

 「私は本当に幸せだ。亡くなった妻も、今の妻も、100%、100%の関係ができている。多くの人は勘違いしている。50%相手に尽くして、50%の見返りを求めていては、必ずすれ違いが起きる。お互いが、常に100%、100%であれば、2人は永遠にうまくいく」

 その言葉は、結婚2年目の私たち夫婦への、人生のメッセージとなった。
(比嘉具志堅華絵 ハワイ沖縄連合会会員、『SHINKA』副会長、1級建築士)