<南風>ある夜の出来事


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 「子供は親の克服すべき課題を持ってきてくれる教師のような存在」という話を聞いたとき、「だから私のところには子供が来ないのね」と、かなり自意識過剰なことを思っていました。

 が、しかし、私も人の子の親となって1カ月。課題を持ってこられまくりです。

 さて、どんな課題か。まず眠い。幼少期には3年寝太郎という異名を取っていた私なのに、この赤ちゃんが眠らせてくれない。

 先日、どうしても泣いて眠ってくれない夜がありました。夫も仕事で遅くなっていて、一人で焦りだけが募っていきます。母乳の出が悪いのかもと思いましたが、完全母乳のため粉ミルクが手元にありません。

 ますます泣いていく赤ちゃんを抱きながら、こっちが泣きたい。パニックになりながら、粉ミルクを買ってきてと夫に緊急電話。

 20分後、待てずに夫に再び電話すると、まだ帰らない。こんちくしょう、あてにならん。

 大急ぎで赤ちゃんを連れて、「いま開いてます」のスーパーへ。会計をしている時に、粉ミルクを買いにきた夫と遭遇しました。バツの悪そうな夫の顔。

 しかし、あんなに泣いていた赤ちゃんは、家に帰るとミルクも飲まずに寝てしまいました。何であんなに泣いていたのか、迷宮入りです。

 落ち着いて振り返ると、すごい形相で夜の12時に粉ミルクを買う寝間着姿の女でした。レジの人も心配したでしょう。完全におかしいです。

 夫にも何であんなに怒ったのか。子供が生まれてからは、できるだけ家にいる夫なのに、ダメ人間みたいな顔で見られてかわいそうに。

 「親の克服すべき課題」。今のところ私の課題は気の短さです。克服できるよう今日も教師たる赤ちゃんに起こされています。

(宜寿次政江、HIV人権ネットワーク沖縄副理事長)