<南風>恩納ナベと吉屋ツル 野菜に例えれば


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 郷土の誇る代表的歌人と言えば、恩納ナベと吉屋ツルであろう。彼女たちを野菜に例えれば、ナベがゴーヤー、ツルがナーベーラーだと思われる。

 何となれば、ゴーヤーにあってはチャンプルーにとどまらず、天ぷら・なますやお茶にもなる柔軟性がある。しかも調理方法を乗り越えて、「私はどこまでも私なのよ」とばかりにゴーヤーそのものを主張する一途なかたくなさがある。

 加えて、加熱しても変色しないところなぞ、「恩納岳あがた里が生まれ島」に見られる一途で情熱的なナベの歌そのものだ。苦み成分さえ、首里王府に毛遊びを禁止されて歌い返すナベの豪胆を感じるが、何だか敵に回すと恐ろしい気配がある。

 かたやナーベーラーは80%が水分なので、自己主張せず、ひたすらだしを自らに取り込むウブサーが料理の定番だろう。加えて、あかすりになったり、その体液が化粧品のファンデーションになったりと、人間に奉仕するところがけなげそのものだ。

 「恨む比謝橋や情けねん人ぬ」に見られるように、薄幸の環境を自らの情念美に高めるところがツルの歌なのだが、実にナーベーラーウブサー的なのだ。ついに自死するツルなのだが、あかすりにナーベーラーのけなげを見て涙するのとツルの薄幸を見て涙するのは同質だからなのだろう。

 ところで、両雄並び立たずの例えがある。今夏にゴーヤーとナーベーラーを植えようと思っていらっしゃる皆さん、両雄を近接して植えると共に結実率が悪くなるので、離して植えるかどちらか一方にしてほしい。その原因は不明なれど、恐らく昆虫たちの相性が悪いのだろうかと。

 とまれ、今夏の食卓のナベにツル性一年草の両雄が鎮座するまでの半年間、ばか話にお付き合いください。

(渡具知辰彦、県交通安全協会連合会専務理事)