<南風>そこには人がいる


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 私が始めたプロジェクトとは、沖縄にいる大学生一人一人にインタビューし、それを一人ずつまとめ、発信することです。

 沖縄にいながら、「沖縄の人は、○○である」などと、「属性」にスポットを当てて語られることが多いと感じるようになりました。

 もちろん、一人一人にフォーカスし過ぎることで見えなくなるものもあるので、そのように語ること自体が悪いとは思わないのですが、沖縄にいながら私ができること、やりたいと思ったことは、沖縄にいる一人一人の「人生」を知りたいということでした。

 既に数人の方にインタビューをしました。ある方は、祖父も父も長男という家系で、三姉妹の末っ子として生まれました。「自分が男として生まれなかったこと」に、ある種の罪悪感を抱えながら生きてきた彼女は、大学入学と同時に祖父の形見である三線を手に取ります。「おばあちゃん子」であった彼女は、祖父母の仏壇の前で、ひとり三線を弾きました。

 今は亡き祖母は、彼女に「上手さぁ」と笑顔で語りかけてくれたそうです。その祖母の声や表情は、彼女にしか分かりません。しかし、彼女にとってそれが、とても大切な思い出となったことは、私にも分かりました。

 人には、一人一人に大切なものがあり、思い出があり、人生があります。心の底から笑い、全力で恋をし、悲しみに涙し、必死に生きる姿があります。そのような一人一人に対する想像力を働かせることが、人を大切にすることにつながると思うのです。

 そして沖縄にも、かけがえのない一人一人の「人」がいて、それぞれの人生があります。「沖縄の人は…」では語りつくせない、一人一人の姿に、丁寧にスポットを当てていきたいと思うのです。

(白充、弁護士)