<南風>宝物の手紙


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 この春、宝物がまた一つ増えた。それは、取材でお世話になった珊瑚舎(さんごしゃ)スコーレ・夜間中学に通う70代の女生徒から頂いた手紙だ。こちらが取材のお礼を伝えなければならないのに、逆に取材へのねぎらいと激励の言葉が一点一角もおろそかにしない丁寧な字で書かれてある。

 その手紙を読み返す度に胸がじんわり、じんじん熱くなる。

 戦後の貧困で学ぶ機会を奪われ、珊瑚舎に入学する前まで読み書きがおぼつかなかった彼女は、かつて人前に出るのが苦手だったという。しかし、3年間の学びが自信となり、彼女はこの春、高校進学の夢までかなえた。

 卒業の日、大勢の観客を前に、晴れやかな表情でマイクの前に立った彼女は、学校を創設した星野人史校長に対し、感謝の気持ちを伝えるとともに、「人前で発表させられるのは嫌でしたが…良い機会をありがとう」とユーモアを交えて本音を語り、会場の笑いを誘った。生き生きと語る姿はあまりにまぶしく、ふいに私の頬には熱いものが伝った。

 2年前にも、珊瑚舎を巣立った80代の女性から手紙を頂戴した。そこには、便箋と向き合う時間が楽しくてたまらないとつづられていた。

 その手紙を読んで、星野校長が卒業生に贈るはなむけの言葉の意味がより深く理解できた気がした。

 その言葉とは、「学びましょう。愛するために学びましょう」というもの。星野さんいわく「愛することとは、異質な他者を理解し、距離を縮めようとする努力」

 相手を思い手紙に言葉をつづるというのは、まさに愛情表現。珊瑚舎の先輩たちから頂いた宝物を見返し、私も愛を伝えていけるよう言葉を磨き、学び続けていきたい!と奮起する春の日です。
(平良いずみ、沖縄テレビアナウンサー)