<南風>多士済々の女性研究者たち


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 「2020年の東京五輪でイラン初の女性マラソン選手として出場したい」と夢を語る彼女は、マングローブを研究する植物学者だ。日本政府の奨学金を得て2009年に来日。博士号取得後、京都での研究を経て、本学(OIST)にきた。晴雨にかかわらず、毎朝出勤前に20キロ、週に計160キロを走る。先日初出場した国際大会では、プロのマラソン選手と互角の3時間40分台で完走した。

 走るきっかけは、長い闘病の末、15歳の時にお母様を癌(がん)で亡くしたことだった。イスラム圏の祖国では女性がスポーツをすることが軽視される中、応援し続けてくれるのが、高校の校長を務めるお父様とお兄様だという。流暢(りゅうちょう)な英語も独学で身につけた努力家だ。

 アルゼンチン出身の発生生物学者は沖縄生活丸5年。同国の教育は大学まで無料で、理系進学を目指す、いわゆるリケジョが多いらしい。社会運動が盛んで、女性大統領も輩出した。このリベラルな国から来た彼女は、黒澤明や小津安二郎の白黒映画を鑑賞し、休みには文楽公演や全国の神社仏閣を訪ね歩く。「親切で、他人に敬意を払う日本人が大好き」という。

 本年1月の教員就任と同時にうるま市宮城島に「里帰り」をしたのは、フィンランド出身の脳科学者だ。OIST研究員時代の2009年から3年間住んだ家は、島の廃校の床材を利用するなど、地元の友人たちと古民家を改修したものだ。その後、海外の研究機関で鍛錬を積むため留守にしている間も島民たちが見守ってくれた。

 4歳からバイオリンを習い始めた彼女は、島の唄三線グループ「たかはなり組」の一員でもある。島外の人、ましてや外国人を受け入れるにはよほどの信頼関係があるのだろう。研究のかたわら、仲間と共に島の空き家再生活動に精を出す日々が続く。
(名取薫、沖縄科学技術大学院大学広報メディアセクションリーダー)