<南風>素朴な思い込み


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 交流会館事務室や2階ホールから見える海や古宇利大橋、晴れ渡った夏空がまぶしい。世間は3連休中。今日もたくさんの車が橋を渡っていく。遠い目で見る私。コラム執筆中。

 交流会館は開館から2年、おかげさまで延べ1万3千人以上の方に来館いただいているのだが、土日は通常出勤の私に連休は縁遠いものになった。コラムが掲載された今日も交流会館は「今、開いてます」(24時間でも年中無休でもない。念のため)。

 来館される方に、「今でもハンセン病の治療をしている人がいる」という質問をすると「そう思う」と答える人が一定程度いるのもまた現状だ。療養所は病院で、そこで暮らす人がいるのだから、患者さんもいるのだろうというある意味素朴な思い込み。

 だから、ということになるのだろうが、ハンセン病と報道されていれば、それは病気になった人の問題であり、ハンセン病という病気を見たことも患ったこともない私には関係ないのだと。

 しかし、それは本当なのだろうか。2005年、愛楽園の公会堂で儀間比呂志さんが講演をされた。絵本「ツルとタケシ」を出版後のことだ。

 儀間さんは、沖縄戦の記録が様々な形で世に出されているが、ハンセン病を患っていた人の体験がないのはやはり差別じゃないかと言われていた。そして、知らなかったことも差別だし、私も差別する側の一人であったと。

 戦争やハンセン病差別というテーマを扱った絵本「ツルとタケシ」。絵本の原画展を、8月中旬まで交流会館で開催しています。儀間比呂志さんの追悼も含めて、絵本では表現しきれない原画の美しい色合い、込められたメッセージをぜひこの機会にどうぞ。5日には、愛楽園夏祭りも行われます。
(辻央、沖縄愛楽園交流会館学芸員)