<南風>眠らないとどうなるか


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 みなさんは徹夜や睡眠不足で翌日の倦怠感や集中力の低下を経験したことがあると思います。これが続くとどうなってしまうのでしょうか。この場合、「不眠」と「断眠」を分けて考える必要があります。不眠とは眠ろうとしても十分に眠れない状態であり、断眠とは自発的(あるいは強制的)に眠らずに起き続けることです。

 人がどれくらい眠らずに起きていられるのかという断眠に挑戦した記録では、1964年のランディ・ガードナーが11日間と最も長く、1959年のDJのピーター・トリップも9日間に渡って不眠不休でラジオ放送を続けました。両者とも断眠を開始して数日すると幻覚や妄想などが出現し、最終的には記憶障害や言語障害など心身に変調をきたすようになっていました。このような挑戦は危険であるため、現在のギネス記録では断眠の項目は削除されています。また倫理的に人間では行えない実験ですが、イヌやラットなどの動物実験では特殊な装置を用いて強制的に睡眠をとらせない状態を続けると生体機能、特に免疫機能が低下し数週間以内に死亡することが確認されています。

 不眠に関しては、不眠症の患者を長期間にわたって追跡調査を行ったさまざまな先行研究があります。これらの研究から慢性的な不眠はうつ病や認知症などの精神疾患を発症するリスクが高まるだけでなく、高血圧、糖尿病、脳血管障害、心筋梗塞など心血管系の病変を中心とした身体疾患の発症や悪化のリスクとなることもわかってきました。

 睡眠は心身の休息やメンテナンス、記憶の定着などに重要な役割を果たしており、食事と同様に人間が生きていくうえで不可欠なものとなっています。それでは人は一日にいったい何時間眠る必要があるのでしょうか。それに関しては、「睡眠負債」の話題と絡めて次回お話しさせてください。
(普天間国博、嬉野が丘サマリヤ人病院 医師・医学博士)