<南風>突然ですが。


社会
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 今日は私についてのお話です。

 先日、琉球新報様の「ピンクドット沖縄」の特集で私達親子を取り上げて頂きました。

 気になっていた方もいらっしゃるかと思いますが、私は男性として生まれ、女性として生きてきた性同一性障害、最近でいうセクシャルマイノリティーの人間です。幸運な事に、周りに恵まれ、ひどいイジメにあった事も、この命を投げ出したいとも思った事もありません。

 ですが、人として生まれたからには、大人の階段を登り、どんなに小さくとも社会に何か貢献しなくてはならず、私は一体…と自分に問いかけた時、必ず受け入れなければいけない現実が見えてくるようになりました。

 新たな命を授かる事もなければ、人生の最後に誰といられるかもわからない…普通の幸せが人より尊い。 そんな中で、作曲家の意志を追求し、自分の美学と共に奏でる私の音を聴きに、演奏会へ来て下さるお客様との時間は「私にも何かできるのかもしれない」と思わせてくれるのです。

 正直、身体も女性にしてしまえば人生が変わるのでは、と悩むこともありますが、楽器を通して何かを表現する上で、私の持つ指や腕、身体全体の肉質や骨格が、小柄な演奏家では難しいところをカバー出来ることがあるのです。

 人から得る幸せを待つよりも、自分で自分を充実させ、もらうより先に幸せを届ける…受け入れた現実から生まれた、一つの私の生き方です。

 きれい事にも聞こえるようなポジティブな発言はあまり好きではないのですが、普通でなくても、完璧でなくても、誰もが笑顔で明日を迎えて良いはず。だからこそ夢を抱き、音楽を通して自分なりの幸せを探すために、今日も私はピアノに寄り添うのです。
(下里豪志、ピアニスト)