コラム「南風」 漂流漂着ゴミと離島誘客


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 久米島において、全国初の燃料不要(低温熱分解:LTD)処理機が、町が管理運営するクリーンセンターに導入された。全町議らがその効果を確認し、離島における漂流漂着ゴミ問題の解決に向けた先進的な試みである。

 観光立県をうたう沖縄にとって漂流漂着ゴミ問題は死活問題である。美しく豊かな自然をキャッチコピーに誘客を行っているが、沖縄本島および離島の海岸は、漂流漂着ゴミで溢(あふ)れている。漂流漂着ゴミは、その約7割が人工物であり、約3割が植物片や流木等、自然物である。人工物は、発砲スチロールやペットボトル、漁業用のブイ等であり、ほとんどが石油系生成物である。時間がたてば、石油系生成物から有害なものが溶出してくる可能性が高く、環境汚染の温床となっている。
 現在、県における漂流漂着ゴミ対策として、年間2億円程度の処理費が計上されている。中国を含む周辺諸国の発展に伴い、漂流漂着ゴミは増加している。漂流漂着ゴミの量が増えれば、県から計上される処理費が増えるものでもない。そういう状況の中で、久米島は、今後増えるであろう漂流漂着ゴミに対して、ランニングコストのかからない低温熱分解処理機を導入し、積極的に解決へ向けて動き出した。日に1・5立方メートル程度のゴミを処理している。しかも、環境基準もクリアしている。
 現在、県内外の議員や民間業者がその処理機の視察で久米島を訪問している。視察という名の観光である。久米島町は、困難な漂流漂着ゴミ問題を島の誘客の材料にした問題解決型誘客を実施したのである。
 漂流漂着ゴミは、限られた予算をむしばみ、地域の発展を妨げる問題である。しかし、発想を変えれば、沖縄への誘客材料になっている。久米島町の積極的な取り組みにあっぱれである。
(玉城常治、T・WIN社長)