第50回県ボディビル・フィットネス選手権大会が8日、北谷町で行われ、ステージ4の大腸がんを患いながらもトレーニングを続けているうるま市の又吉宏樹さん(49)がマスターズ40代の部で頂点に立った。「優勝を目標にしていたが、今はボディービルが闘病する心身の力になっている。生きるためにも、鍛錬を続ける」と力強く語る。
又吉さんがボディービルに魅せられたのは約10年前。知り合いの結婚式で、県内チャンピオンによるポージングを見たのがきっかけだった。「会場の空気も視線も一気に持っていく」と語るほど存在感のとりこになった。
パワーリフティングなどで102キロまで大きくした体重を60キロ台まで落とし、2021年に筋肉のバランスやシルエットを重視するフィジークの大会に出場した。ボディービル大会への出場を見据え、トレーニングを続けていたが、ことし6月下旬、異変に気づいた。血便や便の形が細くなり、検査を受けたところステージ4の大腸がんが発覚。肝臓にも転移が見つかった。
抗がん剤治療が始まったが大会出場はあきらめなかった。「どんな状態でも大会に出るぞ」と決意を固め、抗がん剤を投与した後も頭痛、吐き気、倦怠(けんたい)感に襲われながらジムに通っている。「最初は来るのもやっとで、30分間が限界」だったが今では2時間も練習を続けられるようになった。
「一人の時は落ち込むこともあるが、トレーニング中はその気持ちからも離れられる」と言う。ジムの仲間の「上を目指す姿に勇気をもらっている」という言葉も支えになっている。「前向きでいられるのはみんなのおかげだ」と感謝する。
又吉さんはインスタグラムなどを通じて病気の経過を報告し、検診を受けるよう啓発も行っている。25日からの抗がん剤投与が終われば、10月には手術が控えている。「周囲や家族のためにも死ねない。来年の大会にも出場しないと」と前を見ている。
(玉城文)