コラム「南風」 声の贈り物


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 2011年5月、被災地・宮城県南三陸町の災害FMラジオ局・FMみなさんが開局した。立ち上げ当初、学生やトラックの運転手、劇団員など職業も年代も異なる人たちが集い、試行錯誤しながらの放送がスタートしたという。

メンバーの唯一の共通点が“被災者”ということ。技術スタッフの佐藤ちひろさんは高校を卒業し、専門学校に進学する予定だったが、津波でその予定も流された。佐藤さんは立ち上げ当初をこのように振り返る。
 「メンバーのほとんどがラジオ未経験者だったので全てが手探りでした。でも家族を亡くしたお年寄りが仮設住宅で自殺や孤独死する事件を耳にするようになり、そうした人たちの孤独感を少しでも紛らわしたい一心で、ラジオを通して声を送り続けました」
 “心に寄り添うラジオ”として、地元からうれしい反応が聞かれるようになった昨年3月、FMみなさんは町の財政難のため閉局した。佐藤さんの取材を通して、私は沖縄から何かできることはないか模索した。そしてFMみなさんの意思を引き継ぎ、沖縄から被災地への想(おも)いを送る“声の贈り物”という番組をラジオ沖縄で制作することにした。呼び掛けによってリスナーから多くの想いがラジオ沖縄に寄せられた。そのメッセージをラジオ沖縄のアナウンサーたちが読み上げ、企画に賛同してくれた音楽工房タコスさんが編集し、CDとして仕上がった。
 先月、被災地を取材した際、「私たちへの関心が薄れ、皆さんに忘れられることが怖いのです」という言葉をよく耳にした。この“声の贈り物”が、家族を亡くし明日への生きる希望を見失いそうな被災者たちの心に少しでも寄り添えられたらうれしい。
 「声の贈り物」は被災地の仮設住宅や学校へ送られる。被災地の知人に送りたい方は、ラジオ沖縄まで。
(伊波紗友里、ラジオ沖縄アナウンサー兼記者)