コラム「南風」 人×地域=観光


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 「ちゃんちゃんちゃん」2本のしゃもじが重なる音が博多市内に響き渡っていた。GWは沖縄をはじめ各地が観光客で賑(にぎ)わっていたが、一番の熱気に包まれていたのは福岡県で3日に開催された「博多どんたく港まつり」ではないだろうか?

 オランダ語の「zondag(休日)」を語源とする「博多どんたく港まつり」は市内に設置されたステージで参加者が踊りを披露したり、しゃもじを持ちパレードに参加したりと、GWの2日間で国内最大規模の約200万人の集客を誇る祭りである。4年前のGWに開催されたこの祭りで、私はミス沖縄として参加した。沖縄からエイサー隊を連れて福岡市内を練り歩いたのだが、沿道には観光客と地元の人が溢(あふ)れていて、自分が海外のロイヤルファミリーかと勘違いしてしまうほど熱烈な歓迎を受けた。
 実はこの魅力的な祭りと匹敵する祭りが沖縄にもある。夏の風物詩にもなっている沖縄市の「全島エイサーまつり」である。これは財団法人日本交通公社が魅力別に年中行事を評価したもので、「博多どんたく港まつり」と「沖縄市のエイサー大会」は同等のA級と評価されている。
 お祭りには多くのメリットがある。一つは観光のオフシーズンに企画もでき、オンシーズンとオフシーズンの差をなくすことができる。二つ目は大型施設などを造らなくても、集客が見込めること。過剰な観光開発によって沖縄の美しい自然が失われることもないのだ。そして一番魅力的なのは、地元住民と観光客の交流ができることである。観光客と地元の人たちの摩擦を減らし、エイサーといった伝統文化を認めてもらうことで、地域の住民は生まれ育った地元を誇りに感じられるのだ。
 観光客数1千万人を目指す沖縄。沖縄観光の下支えとなっているのがこうした地域と人のパワーなのだろう。
(伊波紗友里、ラジオ沖縄アナウンサー兼記者)