コラム「南風」 スポーツの力


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 いよいよ高校総体。総体に高校生は何を求める?
 3年生にとってはまさに集大成。誰もがこれまでの努力が報われることを祈り臨む。仲間とともに汗や涙を流し、歩んできた青春の最終ページを輝けるものにしたい。ただ周りからは期待も多く重圧もかかる。

 全てがこの大会のワンプレイで決まる。トップレベルにおいてはその後の競技者人生をも左右。これまでの練習時間と比較すると、ほんの数%にも満たない競技時間。わずかな時間にこれまでの全てをかける。ただ残念なことに、この大舞台に立つことさえ許されない仲間も大勢いる。
 チームスポーツの場合、選手選考は必ずしも個々の能力によらず、指導者も頭を悩ます。また、大会直前のけがや病気でその歩みを閉ざされるものも。ラグビーでは脳振とうの場合、試合はもちろん練習も3週間不可。安全面への配慮とはいえ、高校生にとっては酷。
 今、自らのサッカー人生をかけて闘病生活をしている高校生がいる。突然襲った病に対し、総体での復帰を夢見て、けなげに努力。手術後の度重なる副作用にも負けず、仲間とともにピッチに立つことを強く願い続けた。周りの仲間やドクター、何より家族が全力で彼を支えた。厳しい状況であったものの、本人のサッカーへの熱き思いと周りからの温かいサポートがプラスに働き、病状は劇的に回復。ただ、いかんせん時間がない。今回の総体で、彼はピッチには立てない。
 でも大丈夫。彼がサッカーから得たものはとても大きい。それが全て。他の境遇のものだって同じ。皆スポーツを愛し仲間と頑張ってきたではないか。さぁ、高校スポーツの祭典、総体。選手だけでなく皆で最高の瞬間にしよう。
 きっと彼も近い将来ピッチに立つ。誰よりもサッカーが好きなのだから。スポーツの力を信じよう。
(喜瀬典彦(きせのりひこ)、県ラグビーフットボール協会広報委員長)