「どんなだったかー」
電話口から飛ぶ父の声。
ツアーから帰って来た時は、両親の声がにぎわう。たわいのない会話をしたり、ツアーの状況等を手短に話す。
「うがいと手洗いは忘れないよー」と、いつも私の体調を気づかってくれる母。もう長い間、母が風邪で寝込むということを聞いたことがない。
父は、家族の応援団長。家族一人一人のために体を張って、一緒になって真剣に取り組んだり、楽しんだりしてくれる。
私がジャズ・シンガーとしてデビューしたころ、ジャズ雑誌を毎月買っては、ジャズの知識や、どんな音楽なのかをいろいろと調べたり、CDを買って来ては勉強をしたり。いつも隣り合わせで一緒に励んでくれる。また、私が出演したラジオ番組を録音したり、他にも父が好きな音楽が流れると、それらを録音して渡してくれたりと、いつも一緒になって歩んでくれる。一生懸命な両親の姿に、たくさんの愛情に、感謝の気持ちでいっぱいになる。
一番印象に残っていることは、何年か前に父からCDをプレゼントされたこと。アトランティックスターのデュエットで「オールウェイズ」が入っているCDと、私の大好きなシンガーで、また尊敬もしていて曲もよく歌っていた、ホイットニー・ヒューストンのベストアルバムをわざわざ買って来てくれた。
父のサポートを、父の私への願いとして受け止めて、感謝の気持ちを持って今でもステージに立っている。
デビューからいくらか年月はたったものの、「今」だからこそ、なおさらあらためてサポートいただいている気持ちをくみ取ることができる。
「今できること」に向き合いながら、さらに「今できることにプラス」を目指して、前進して行きたい。
(安富祖貴子、ジャズ歌手)