コラム「南風」 ノーサイドの精神


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 ラグビーは時間制。同点だった場合はどうなる?トライ数、ゴール数が同じ場合は抽選。なんと非情なる結末。これについては多くの批判がある。サッカーのように延長戦やPK戦などで勝敗を決すべきとの声も。

 あくまで私的意見、やはり抽選こそ妥当。理由はコンタクトを伴うから。体のぶつかり合いの中で体力の消耗は想像を絶する。安全面から見て、規定時間以上の競技続行は不可。時間内で完全燃焼することこそ求められる。最終的にスコアで互角。だから引き分け。決勝戦の場合は両チーム優勝。勝ち上がりで次試合がある場合、抽選で「紙」に委ねる。「紙」の審判に対して、笑顔も涙もない。あるべきでない。なぜなら、そこに勝者も敗者もないのだから。「紙」による審判の敗者は自らの思いを勝者へ託し、勝者はその思いをくみ取り次戦へ臨むべき。まさに紳士的。ラグビーの良き文化、ノーサイドの精神にも直結。
 ノーサイドとは試合終了を示す言葉。敵味方なしの意。試合後、社会人ではアフターマッチファンクションという会が開かれることがある。ビールを片手に互いの健闘をたたえ合うのだ。体を激しくぶつけた相手だからこそ、真に分かり合える。たとえ大きな実力差があっても、ラガーマンとしての誇りと相手への思いやりから、下手に力は抜けない。だからこそ試合を振り返りながら、一緒に酒が飲める。ラガーマン同士の絆を深める良い機会。
 今回高校総体において、百点ゲームが数試合。土ぼこりが舞うグラウンドの中で傷を重ねた者たちが晴れ舞台の芝の上で、歓喜と落胆を交錯させる。点差がどんなに離れても、真摯(しんし)な勝負の一つ一つがラガーマンとしての誇りを確実に育む。試合後も、ラグビー文化を創造、継承する場としてアフターマッチファンクションを推奨したい。もちろん高校生は百%果汁片手で。
(喜瀬典彦、県ラグビーフットボール協会広報委員長)