コラム「南風」 化学物質と酵素


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 意識するしないにかかわらず、私たちは化学物質につかりきった生活を余儀なくされている。ある化学物質の安全性が疑われれば代替品が登場し、その危険性が指摘されるとまた次の代替品が作られる、それが現代社会の実態である。

 生命に不可欠な水はどうだろうか。水道水の原水に紛れ込む菌類等の微生物にとっては塩素殺菌が有効であるが、最近ではクリプトスポリジウムのような耐塩素性病原微生物が登場し、塩素に代わる殺菌方法の必要性が叫ばれている。また、鉛による神経毒への懸念から、水道管は鉛管から塩化ビニール管への転換が進められている。しかし、この塩ビ管にも樹脂の安定剤としてステアリン酸鉛等の有機鉛が含まれており、わずかながら鉛が溶出する。実際、塩ビ管を作る工場では鉛中毒の防御対策の必要性が指摘されている。
 毎日口にする食品にも、さまざまな合成添加物が含まれている。保存料や酸化剤、乳化剤等挙げればきりがない。食品の素材そのものにも農薬や化学肥料、除草剤等が残留している可能性がある。海外輸入農作物も、長期貯蔵や遠距離輸送で害虫やカビが発生しないよう、農薬処理(ポストハーベスト)がなされている。医師から処方される薬も、漢方薬を除けばほぼ全てが合成化学物質の塊である。
 このように、何げない日常生活をあらためて思い描くと、私たちは常に複数の化学物質を不用意かつ同時に体内に取り込んでいる。
 人の体にとって異物である化学物質を攻撃するためにフリーラジカル(遊離基)や活性酵素があるが、その活性酸素が体内に残ると逆に、健全な細胞を攻撃しわれわれの体を傷つける。その活性酸素を分解し無害化するのが酵素である。化学物質に偏重する現代社会において、酵素をいかに摂取するかが、われわれの健康を守る唯一の対策である。
(玉城常治(たまきじょうじ)、T・WIN社長)