コラム「南風」 風化する歴史とその継承


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 毎年6月になると沖縄戦に関する記事や平和教育等が地元新聞紙面をにぎわす。戦後68年もの月日がたち、戦争を体験した人が少なくなっている。体験のないわれわれは、どのようにそれを伝えていくことができるだろうか。

 沖縄戦を総体として考えることが重要である。われわれは、これまでさまざまな体験を読み聞き、映像や作品を見たりして、戦場を想起することができる。それらは、半世紀以上前の事だが、単にその過去の物語を証言して、情報として残しているものではない。これまで言わずにまたは言えずにずっと抱えて過ごしてきた半世紀、そのように生きてきた半世紀がそこにある。その時に洗われて、その人たちの経験が今、溢(あふ)れる言葉になっている。
 遺骨収集を通して沖縄戦を考える方もいれば、これまでの証言集を活用する方もいる。または、平和のイベントを通して考える方もいる。それぞれでいいと思う。歴史が風化されることなく、慰霊の日を迎え、考える時間を割いてほしいものである。
 戦争体験をしていないわれわれにとって、一つのきっかけになるであろう事業がある。那覇青年会議所が企画している「平和の灯火(ともしび)」事業(6月22日午後6時)である。平和の礎の周辺を中心に6千本のキャンドルに火を灯(とも)し、先の大戦で犠牲になられた方への哀悼の意を表すとともに、未来永劫(えいごう)戦争のない平和な世が続くようにと祈りを込める。糸満市の児童生徒が平和を願って書いた絵画を灯火に貼るといった学校教育との連携も図っている。さらに今年は、沖縄・台湾・香港との合同開催で、それぞれの国・地域で同時刻に点火し、同じ瞬間に世界恒久平和を祈る事業となった。
 戦争を経験していないわれわれが、その責任を自覚し、向き合う姿勢が今、問われている。
(玉城常治(たまきじょうじ)、T・WIN社長)