コラム「南風」 精神科医療の扉


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 精神科はよく分からない世界だから「怖い」という方は少なくありません。先日、北海道の病院で医師が患者さんに刺殺されてしまうという痛ましい事件があり、数年前には、てんかんという病気の発作による交通死亡事故がありました。数年に一度、精神や神経疾患の患者さんによる事件や事故が起こるとニュースが大きく取り上げ、誤解をあおるような間違った報道が出てくることがあります。

犯罪の統計調査によると、精神疾患を患っている人の犯罪率は0・09%、これに対し病気を患っていない人の犯罪率は0・25%。犯罪率に関しては、精神疾患ではない場合の方が高く「精神障がい者は犯罪を起こしやすい」という発想は大きな誤解なのです。交通事故に関しては高齢化、生活習慣病などにより心疾患の患者さんの事故が増えています。
 精神疾患は治療によって改善されるものです。事件の事例をみると、治療の中断や、治療を受けておらず症状が悪化した場合に事件に至っているケースがほとんどです。現代はストレス社会とも言われ、人間関係や経済的な悩みなど、誰もがストレスを感じる時代で、5人に1人が「うつ」を経験するとも言われています。うつは、人として弱いからなのではなく、ストレスにより疲れてしまった身体と心の悲鳴なのです。精神疾患は気合で治せるものではありません。正しい医療と、休養、そして家族や仲間からの理解と支えによって回復します。つらい時に医療を受けることは、恥ずかしいことではありません。「精神科」の看板に抵抗のある方には「心療内科」をお勧めしています。精神疾患も風邪や盲腸などと同じ普通の病気なのです。受診に迷ったら、まず続けて通いやすい場所の病院かクリニックを見つけて、症状や不安について気軽に電話で相談をしてみてください。
(小林学美(こばやしまなみ)、天久台病院 精神保健福祉士)