コラム「南風」 進学への希望


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 私が高校3年の時、進路指導を控え、母に「大学に行きたい」と伝えると、「そんなお金はないよ」と一蹴されました。

 私たち家族は、後に父親が自己破産するような経済状況であったため、学ぶ意欲以前の課題が立ちはだかっていて、大学にお金をかける物理的・心理的余裕はありませんでした。
 母に大学行きを拒否された私は、進路指導の先生と相談した結果、働きながら資格を取れる准看護師になるという道を選択しました。
 沖縄県の高校進学率は全国で最下位、大学進学率も最下位、全国学力テストも最下位です。中でも大学進学率は全国平均と比べ、かなり低いといわれています。
 これは単に学力の問題だけではなく、沖縄の高い失業率・低所得という経済的な問題と、生活保護世帯、母子家庭の比率が高いという社会的な問題が、学力の低さの要因の一つとなっていると考えられるのではないでしょうか。
 私は、「沖縄の子どもの貧困」にまつわる問題として、食べることや生活に困ることと同じぐらい、十分な教育を受けることができないという県内のこのような就学状況は、「沖縄の未来に関わる」県民にとって、人ごとでは済まない深刻な問題ではないかと考えています。
 40歳を過ぎた現在、私は准看護師から正看護師になるために通信学校へ通い始めました。訪問看護師になりたいという夢をかなえるためです。
 今、夫と子どもたちの理解と協力の下で、いったんは諦めた正看護師の資格取得を目指して、学校へ通えることを、本当に幸せだと感じています。でも、これからの子どもたちにはもっと、夢と希望を持って、将来を選択できる自由を確保できるよう、できる限り沖縄県全体で支えてほしいと切に願っています。
(福峯静香、NPO法人療育ファミリーサポートほほえみ理事)