コラム「南風」 リビング・ウィル宣言


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 最近の健康保険証の裏には臓器提供の意思表示の欄があります。国内でも臓器移植の医療技術が上がり、尊い臓器の提供により、つないでゆける命があるからです。自分にもしものことがあった時、臓器を提供できるかどうかを意思表示する、言葉では理解できても決めることは簡単なことではないかもしれません。

 リビング・ウィル宣言というものが別にあります。「自分が最期はどうありたいか」。生前の元気なうちに意思表示をするというものです。日本尊厳死協会にリビング・ウィル宣言をしている人は12万人を超えました。自分の人生について、命について真剣に考える人が増えてきた結果だと思います。主に、もしもの時に延命治療を受けるかどうかの意思表示になりますが、これを機に、愛する人に最後に伝えたい言葉、自分にその時が訪れたら誰にどんなふうに送ってもらいたいかなど、元気なうちに考えて署名をもって残す機会にもなります。この宣言があることで突然もしものことが起こった場合、家族も、救急医療の現場も、本人の意思を尊重して考え行動する大きな助けになるのです。
 私は30歳になった時に家族と相談をしてリビング・ウィル宣言をしました。私なりに30歳が本当の大人になる年だと考えていたからです。そして大人として生きる覚悟の一つとしてこの宣言に署名をしました。不思議なことにホッとする思いが湧いてきました。自分の人生の選択に自分で署名することができたからでしょうか。人生の最期は誰にでも訪れます。もちろん自分から命を絶つ選択は尊厳ある死にはあたりません。自分の人生、最期はどう締めくくりたいかを考えることは、それまでの人生をどう生きたいか、より真剣に考える機会になるのだと思います。大事な人と、人生について話をしてみませんか。
(小林学美(こばやしまなみ)、天久台病院精神保健福祉士)