コラム「南風」 家畜とソーシャルキャピタル


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 集団の協調行動を活性化することは健康、長寿、有事の社会で有意義に働くと言われています。人間関係の構築によるソーシャルキャピタルは信頼関係、ネットワークが重要であり、その仕組みも多様化しました。

 沖縄の社会で重要な地縁、血縁は大切にされていますが、昔に比べ共同作業、共食の場が少なくなってきたことは、都会化の一面でもあるのでしょう。
 家畜は年の変わり目、季節の変わり目、ハレの日など特別な催事に屠(ほふ)り、精霊、祖霊など神に供え、その後に食する神と人の共食になります。家畜を屠り肉にするには共同作業、分担作業が必要であり、作業を終えなければ食することができません。また宴は多くの人々が集まり、皆で一つの鍋の物を食べる共食になり、多くの関係が成立します。
 動物を取り巻く伝統的食環境は、神に祈り、感謝し、皆で力を合わせ、皆で食べる特別なものであり、肉とはそのような価値の物になります。その集まりの人間関係は、水平的関係が形成されてきたようです。
 他にも家畜に関わる集まりは、改良組合や協同組合など同じ職業、職種によっても成立し、情報や技術交換を行い、人的交流が行われます。また同じ趣味嗜好(しこう)の集まりでは、定義、定款などによる縛りも薄く、楽しみを前提に集います。牛、馬、豚、ヤギ、犬、鶏と各動物で保存会、愛好会などの集まりがありますし、闘牛や競馬などの同じ嗜好同士でお互いが楽しむ環境を作りだすこともあります。このような関係において、お互いの顔を見て、お互いを思い合うことがストレスを緩和する良好な関係になるのではないでしょうか。
 動物を飼育し利活用することがソーシャルキャピタルの潤滑油のようになり、また健康につながり、動物との関係によるセラピー効果もあるよう進めていければと考えています。
(高田勝、沖縄こどもの国専務理事・施設長)