コラム「南風」 ビデオゲームオーケストラの話 その3


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 簡単にビデオゲームオーケストラの歴史を説明してきましたが、立ち上げからこの5年間、楽しいこともつらいこともたくさんありました。それを乗り越えて、世界中から認知され、アメリカ国内に限らず国外でも公演し、来月発売のファイナルファンタジー最新作「ライトニングリターンズ」にも録音で参加するくらいのグループに成長させました。

 よくどうやって継続できたのか、何がキッカケでこのグループを創ったのか、取材で質問されます。その答えは多分二つしかなくて、その一つは「楽しいから」です。立ち上げ当時に感じた楽しさ、今でも変わらず感じています。自分自身が創造したグループの公演で、ステージ上で演奏する自分と呼応する熱狂的な数千人の観衆。この強烈な出来事は実際に体験した人にしか感覚的に理解できないでしょうね。間違いなく世界中の感動体験トップ5位以内には入る快感でしょう。
 そして楽しさの次に大事なのは「自分の信念を貫くこと」です。僕が過去に失敗した時はいつも何となく妥協したりして、信念を曲げた時でした。これはとても難しいことで、大きいプロジェクトを抱えて負担が強い状態だったりすると、何が正しい選択なのか分からなくなる時もありますから。そうやって失敗を繰り返して成長するのですけどね。
 そしてサポートしてくれている素晴らしい演奏家やスタッフ、困った時に手を差し伸べてくれた友人たち、僕が精神的に追い詰められていた時に仕事を休んでボストンまで助けに来てくれた母親。興行が失敗するかもしれないという時に父親に電話で泣き言を言ったら「失敗したら親父(おやじ)が責任を取るから、やれ」と背中を押してくれて、結果として大成功したこともありました。あまり言わないけれど、いつも感謝しています。
(仲間将太(なかましょうた)、音楽プロデューサー ギターリスト)